優しい閃光

背番号2番、立ち位置は0番。わたしのいちばん

白い戯曲を握る

ドラマチックなひとときを持つ男のそばにいるだけで、自分も彼のドラマの一部になれる気がした。

今‪‪読み進めている本に織り込まれていた一節。文章を読む際、シーンの情景や言葉に対する薄ぼやけたイメージ映像が、頭の端の方に置かれた小さな小さなスクリーンにひっきりなしに映されている感覚がある。文字列に目を通して理解にかけて、上記の一節を飲み込んだとき、スクリーンは世界で一番に好きな顔を映し出していた。

主人公、とよく言われる人だ。物語性と現実感が相剋して高め合っているように見える優斗くんは与えられたアイドルという役柄に洗練された地で挑むのでむしろドキュメンタリーのようではあるが、それでもドラマチックと形容するにはぴったりな性質の人だと思う。ただ、優斗くんを好きな自分が彼のドラマの一部にいるかと言えば、感覚的には遠からずもなんだかうまくはらまなかった。むしろ主観で主人公とされる優斗くんを見るとき、きっとわたしはわたし自身のこともまた髙橋優斗担としての役を担った主人公として存在している気持ちになるだろう。と、そんなことを考えていたら思考の代わりに投影が止まり、理解が止まり、ページをめくる手も止まったそのとき、やっぱり、優斗くんのことを考えることが好きだなぁと不意に思って、何行か前まで目を戻した。

 

怒涛だった一年だけど、わたしはというと今年もそれなりに楽しく生きていて、それは友達と食べるご飯がなんとなく美味しいからで、道端に咲いてる花がなんとなくかわいいからで、なんとなくタイトル買いした文庫本が思いの外ドラマチックな展開を見せるからで、そして優斗くんのファンをやっているからで間違いない。優斗くんはというと今年もステージにいた。アイドルをしていた。ぐらぐらと揺らぐ情勢の中で、まるで友達と食べるご飯がおいしいみたいに、花が人に何気ない多幸感を運ぶように、運命の出会いをした本が面白いみたいに、今年も一年、優斗くんは当たり前みたいな顔でアイドルで居てくれた。‪どれだけのものに支えられて当たり前然とするか到底計り知れない日常のふりをした非日常にそっと感謝して、そして祈る。そこに立っていてくれてありがとう。当たり前に笑顔でいてくれてありがとう。どうか支えられていることが十二分に伝わっていますようにと、そういう風に何度唱えても足りない行き場のない想いが胸を渦巻いて燻っている間も、優斗くんは向こうで笑っている。‪笑って、求められることは嬉しいと、わたしにとって世界で一番の顔で言う。身を賭した希求の肯定と証明の存在に取り込まれることは心地良くて、なにより深く深くの感情を揺さぶる。

引き起こされた情動は自身からうまれた半身だ。だからそれくらいならば大切にしてみようかと包んで理解しようとして、愛すことのハードルが下がる。優斗くんを見て、悲喜交交が引き出される感覚が好きで、優斗くんを見ているときの自分も好きだった。当たり前ぶった特別に、日々救われている。彼らの放つ眩すぎる光を吸収して自らのエネルギーに変換するような救いも、照らされたおかげで表出した自分の影を見て、安心や実感を抱くような救いも、全部優斗くんがそこにいてくれるから叶うことだ。そういう風に、毎日を死なないために生きることをしない理由をひとつ与えてもらってる自覚があって、ただ当然ながらわたしは彼らがしてくれるように彼らの生活を彩ることはできなくて、じゃあ何が返せるだろうかとなると、やっぱり求められることで動いていると言う。世界一かわいい猫髭を浮かべて。この男の子はこういうところが本当にずるい。

ともあれ、優斗くんが20歳もアイドルをしてくれたのでこの一年も本当に楽しかった。きっと俳優でも、モデルでも、どこにいてなんのお仕事をしていても、絶対にどこかで誰かの主人公だっただろう。でも、ジャニーズでいてくれている。これもまたドラマチックといって差し支えないような経緯の先に。本当に、本当に20歳の優斗くんがジャニーズ事務所所属のアイドルをしていることが嬉しい。その上、ほんの一握りの奇跡すら当たり前と錯覚させてくれるなんてまるで夢だ。眠った後、突飛で異質で、非現実的な世界を当然に受け入れ主観で冒険する夜があったように、わたしたちと非日常をがっちりと繋いでいる。ゆうぴーという主人公、それはそう。でも夢の介在者となりわたしたちをも主人公に仕立ててくれる。求める声を上げれば日曜日の朝でなくなって来てくれるのは、ヒーロースーツを放り投げて着の身着のままに闘うような、ドラマというよりドキュメンタリーちっくなヒーローだからかもしれない。

だからこそ、向けられる感情も朝起きたときの太陽の光も彼に降り注ぐものはすべて鋭く刺すようなものじゃなく柔らかくあたたかくあってほしいとか、一見当たり前に思えるような幸福が消えることなく溢れていて欲しいとか、また無意味な祈りをしてしまう。そんな時でさえも、コマ撮りされたフィルムの一枚としたらほんの一瞬だ。全部繋げて伝説という名の永遠を作っているさなか、20歳の優斗くんが21歳に変わる。

 

21歳の髙橋優斗くんに、どうか当たり前のように輝きと幸せが満ち溢れますように。お誕生日おめでとうございます。