優しい閃光

背番号2番、立ち位置は0番。わたしのいちばん

愛は屋烏に及ぶ

その愛、横浜、みなとみらいにて。

 

 

わたしの好きなアイドルは神奈川県横浜市の出身だ。横浜に生まれ、ハマっ子を称する髙橋優斗くんは地元愛に溢れている。理想のデートプランについて問われればたちまち聞き慣れた詠唱が始まるし、隙あらば愛する地元球団の話をする。おれは横浜でも少し田舎の方なんだけど、と自分の生まれ育った土地について話してくれる声やテキストが彼らしくて好きだった。自分が自らの出身地にまったくといっていいほど愛着や思い入れがないからこそ、相反する優斗くんがもの珍しく思えて、興味深いというのもある。

前回横浜に足を運んだのは、優斗くんが22歳の誕生日を迎えたとき。ホテルをとってみなとみらいの景色を見ながらケーキを食べるといういかにもおたくらしいことをした。コスモワールドの乗り物がそこそこ怖いことを初めて知った。それ以外はこれといって特別なことはしなかったけれど、よく晴れた横浜の街を、友人とくだらない話題を交わしては大笑いしながら歩いて、大きく空気を吸って、時々思い出したように空を見上げた。ほぼ東京でしていることと変わらないそれだけのことがすごく特別なものに感じられた。一日をかけて、わたしの体の中に搭載されている気がする、幸せを感じて保存しておく器官みたいなところがじわじわとメーターを上げて満たされていくような感覚。優斗くんが育った、優斗くんが好きな街。横浜。

 

時は2022年。3月も中旬。わたしの手元に横浜公演のチケットはなかった。ここにチケット関連の話題を記しておくのは個人的にかなり憚られるけど、今回においてはかなり大きな要素なので書き留めることにする。というのも、チケットがないことも重大な問題だったが、それ以上に問題だったのが、その時期のわたしがチケットを探す気力そのものを持ち合わせていなかったという点だった。いつもなら、チケットがないとなれば必死になってとにかくギリギリまで探してどうにかこうにかなるよう動いて、それでも見つからなかったら諦めるところを、行けないなら行けないで仕方ないのかなあなんて普段の自分ならまず思わないような思考になっていた。自分のことだから、後々、絶対に悔恨の念にかられまくるのは簡単に予測できたけど、どうにも動けない。おたくごととは一切関係なく、ただ日常的な面において致命的なまでに体力やら精神やらが萎びてしまっていたおかげで本当に何もできなかった。やっぱり楽しくおたくをするためにもなるべく健康的に生きたいな。改めて今年の目標は、健康一本勝負。それ以外は何も求めません。

 

そんな中、横浜公演が刻々と迫っていたある日。そういえば最近開いてないや、とブログにアクセスした。伝記をひらくことさえサボっていたから、少し遡って二週分連続で見た。その日は優斗くんの更新日だった。

すこしおどけたように❤️をつけて、自分でつっこんで回収している。ああ、どこまでもかわいいひとだな、このかわいいひとに、横浜で会えないのかあ。そう思いながら一度スクリーンショットをした。他のメンバー分も読みながら、ページの一番上まで辿り着く。定刻より少し遅れて更新したらしい優斗くんの短めの文章が目に入る。

「18.19みなとみらいで待ってます!」

そのときと同一の感覚に再び襲われることは、今後しばらくはないように思う。ぐるぐるぐるぐる、感情だか思考だかもわからないようななにかが巡っている最中、彼のホームタウン横浜のみなとみらいにあるアリーナ会場、そのステージに立つ優斗くんを想像した。それから、涼やかな秋風を吸い込んで見上げた青空を思い出す。なんてことはなく書いたんだろう。うっかりしていて、急いで書かなければいけなくて、ちょうど数日後はライブがあって。優斗くんの中からつるっと出てきた言葉。もちろん本心であり大切な一文だろうけど、あくまでも自然に何気なく打ち込んだ言葉だと推察できる。ただそれが面白いくらいにわたしの心を掴んだというだけ。それだけのことだ。まさに、衝動に駆られるといった言葉が正しいだろうか。公演まであと三日。今までの無気力はなんだったんだといったレベルで意欲が湧いてきて、そこからは必死になって探した。

あとでカメラロールを見返したら、三回分の待ってます!が並んでいた。なぜか同じページを三回スクショしていたみたいだった。

 

人生どうにかこうにかなるもので、本当にありがたいことに18、19日共に公演に入ることができた。せかせかとした様子が伺える優斗くんらしい伝記の何気ない一文。からっとした声が聞こえてくるような文字列。優斗くんがみなとみらいで待ってくれている。他の要素はたったの一つもなくて、それだけにただ突き動かされて、わたしは秋ぶりにみなとみらいに来ていた。天気が雨なのはもう慣れたものだけど、アリーナ規模の会場の席に着くのは未だすこしそわそわとしてしまって慣れない気持ちだった。

 

 

Welcome   ようこそ日本へ

君が今ここにいること

とびきりの運命に   心からありがとう

ほんのすこしでも気を緩めたらその瞬間にぼろぼろ泣いてしまいそうだった。重なり合ったいくつもの偶然が、優斗くんの手によって運命に塗り替えられていく。

気力がしなびていながらも、なんとなくで伝記を開いたあの行動は、この一瞬のためにあったんじゃないか。あのとき生まれた衝動は、決して一時的なテンションや言葉の雰囲気にのまれただけではなくて、すべてわたしがここに来るよう予め用意され仕組まれていたものなんじゃないのか。彼によって、運命によって、手繰られ、導かれていたのではないか。そんな馬鹿なことを考えてしまうくらい、優斗くんはアイドルをしていた。わたしにとっての無上のアイドルだった。

優斗くんはわたしのアイドルだから、わたしは全ての偶然はとびきりの運命なのだと信じこめる。だって優斗くんがそう歌っているんだ。もともと運命は信じる派な優斗くんが。前々からこの曲が好きだと言っていた優斗くんが。ようこそ、と全てを迎え入れ受け止めるみたいな、慈しむみたいな、ふんわりとした中に甲斐性のある笑顔を湛えて、大好きなかわいいかわいい歌声で数ある運命に感謝している。横浜みなとみらい、ぴあアリーナのステージで。わたしはそれを優斗くんの団扇を持って、白く光ったペンライトを握りしめて、客席から見ている。ここに来られて良かった。ここであなたに会えてよかった。強く思った。

こちらこそ、とびきりの運命と髙橋優斗くんに、心からの感謝を。

 

今回のセットリストも手放しに楽めた。HiHi Jetsに抱いている信頼に触れては再三再四そのかたちを大きく自覚する。当たり前に外周があって真ん中には形を変えるセンターステージがあって、ローラーで爆走したり足でも爆走したりしていた。もはやお決まりの電飾ビカビカコーナーもあった。安定した構成とパフォーマンス、客席の一体感に、アリーナ規模でのコンサートはまだ二回目というよりもう二回目という感想の方が強かった。ぎゅっとまとめられた流れで見るソロは相変わらず雰囲気がかぶることなく、彼ららしくて。優斗くんのソロが可愛くて幸せで。てんだらーとれりびーの繋ぎはメドレーを抜いたら一番好きだったなあ。横浜だー!みなとみらいだー!地元ですよー!とテンションが上がったゆうぴーがしょうもないワードを連呼したり、1:4がみるみるうちに4:1になるという、ついさっきまで東京出身を仲間はずれにしていたはずが秒で寝返られ、生粋の横浜市民ひとり取り残されるくだりをしていたので笑った。MCでふざけている姿は相変わらずアイドルというよりかあほな男子たちそのものでつくづく愉快で愛しい。なによりゆうぴーがとても変なテンションになりながら横浜を主張しながらきゃらきゃら笑っていたので、揺れるふやふやの白い頬を見ながらいつもの嬉しさに支配されていた。まだでぃあうーまんにやられる前だから、そこそこ呑気に、でも強い気持ちで、こんなに楽しそうな優斗くんを見に来られて良かったと噛み締めていた。

正直、デビュー組20曲メドレーという大胆なコーナーには度肝を抜かれた。前半にオリ曲やソロ、彼ららしい演出をふんだんに入れ込んでいたのもより効いている。セットリストの一部のいちコーナーとだけでは到底言い収められない、大きな意味を持った枠だった。こんなに上手く意思表示というか、目的、今の5人が追い求める景色、そういったものを伝えながら、多くの衣装やユニット、選び抜かれた選曲で楽しませられるグループになったのかと思うと、本当にすごいところまで来てしまったんだなと良い意味でぞっとした。組み込まれた曲の中には4人時代からのおたくをしてきた者として懐かしく思うものも多かったからその度に感慨深くなったりしたし、彼らのクレバーさに改めて唸らされる時間も多々あった。

そして、コーナーも終盤で、上記の出来事。情緒をぐずぐずにされるハプニング。いやサプライズ?   パーソナル、キャラクターといった方がまだ正しいだろうか。髙橋優斗くんという像に横浜という地。アイドルと観客という結びつき。そしてそこにいる一人一人の背景。ここにいる誰もが、自分の好きなアイドルを見ていて、異なる思想や想いを抱えている。わたしだってその一人だ。わたしはわたしから見えている優斗くんだけが好き。各方面から伸びる糸はあちこちで交わって絡まっていて、それらひとつひとつに運命だと呼びかけるのように歌う優斗くんの微笑みは綺麗で、歌声はあまく優しかった。なにかが救われたような心地。優斗くんって、わたしにとってこんな存在だったっけ。ぴしっとしたフォーマルな衣装はゆうぴーにとても似合っていた。

誰もが納得の一曲でメドレーは締め括られていた。深いリスペクトと同時に若き闘志をこれでもかというほど浴びる。嵐起こす高速。嵐を越す高速。最前線を打ち壊すを銘打ったコンサート、一曲目からここまで、もっといえば最初から最後まで繋がりがあって込められたメッセージがあって、それが小気味良いテンポ感と緩急を持ちながら構成されている。コンサートの度に実感させられる。やっぱりこの人たちの作るコンサートが好きだ。だからこそ、メドレーの直後に『JET』というグループ名の一部を冠した新曲を持ってくる意味も容易に量ることができた。21個目の唯一無二、新世界を作るのは俺たちなんだと。そこへ最速で到達するのだと、彼らの克己心に満ちた精神が雄弁に語られている強気なセトリ組み。正直、公演中は歌詞の聞き取りやモニターでの確認に注力できなかったので、数日後にYouTubeで上がった映像で歌詞を確認して、時間差でさらに打ちのめされた。そして、ラスサビ前で5人が向かい合って手招きし合う振りのところがなんともじぇっつらしい。最前線を打ち壊すためにも、5に拘るのは大前提。わたしはいつかのテキストで、いがりくんの「5に拘る」理由を聞いて安心感と信用を得た。かなりのエゴだけど、これからもそれぞれが自分のために5人で居続けるHiHi Jetsでいてほしい。

駆けるでも、まるいステージでみんなで中心を向いて、各々顔を見合わせて目配せをしながら歌っていたのが印象的だった。その周りを満遍なく散らばった5色の光の海がぐるっと囲んでいて、彼らが踊らないときも自然と振りの動きになる。感動的なその景色は一方ですごく平和でのどやかな空気があった。5に拘るのは大前提で、ことあるごとに、は〜ふ!って楽しげにファンネームを呼んでくれて、みなさんは追い風ですと言ってくれる今の彼ら。そんな彼らとおたくとでこれまで一緒に歩んで築いてきた関係性が、ここで一旦、ひとつ確立したようにあの景色から感じられた。勝手にもね。

 

その駆けるの前にセンターステージで挨拶が行われていた。18日、優斗くんはこうしてこのメンバーに出会えて、ジャニーさんとの出会いだってそうで、色んなお仕事や縁に恵まれたのも運命、奇跡だって思う、といったことを話していた。HiHi Jetsのメンバーであり、いちファンなんだということも。運命。意図的かどうかわからないけど、そのワードにどきっとする。強い力で掴まれた心臓はまだ元の形に戻っていない。優斗くんを追いかけているとこういう現象に立ち会うことが多い。分かってて言っているのか、それとも意識せず発しているのかわからないのだ。わからないから好きで、好きだから余計にわからなくなる。

 

どうしてわたしが優斗くんを応援するのかは今までもこれからも揺るがない。ゆうぴーがかわいいかぎり、わたしはゆうぴーから目を離せない。たくさんのことが変わっていっても絶対に変わらない部分であるし、そこがなくなった瞬間(今は想像もつかないが)、少なくとも今までの優斗担としての自我は保てなくなるだろう。

かわいいから見ていた。かわいくて一生懸命だったから見ていた。かわいくて、少し天然な普通の男の子なのかと思いきや、たまに確信をつくような発言をほろっとこぼすのがへんないきものだなーと思って見ていた。かわいいひとがさらに責任感を身につけて、夢を明確にして、ずんずん進んでいくのが楽しくて見ていた。わたしはいつも優斗くんのかわいさを燃料のベースにして動いてきた。それで受け取るのは、かわいさによる多幸感とか楽しさとか愛おしさとか愉快な気持ちとか、ゆうぴーといういきものを不思議に思う感情とか。悔しさなんかを抱いた日々もある。誇らしさもあれば、夢を重ねて期待で高揚するときもあった。そして今回は、どこか救済を受けたような感情を持ち帰っていた。いつの間にか、優斗くんが与えてくれるもの、かわいさに付随した恩恵。そのあたりはかなり変化してきているのだなあと気づいた。変化というよりは増えたと言うべきかな。

勝手に追いかけたいから追いかけてた。まあ今でもこれからもそのつもりだけど、必死に走っていたら、知らぬ間にわたしの中でゆうぴーってわたしを救ってくれるような存在にまでなっていたらしい。もちろん、日々をアイドルとして生きてくれている事実に救われていることは大きいけど、今回のようなケースははじめてだ。まだあまり言語化できるほど自己理解できていないけど、報われたとはまた違う、自身そのものと、のしかかる無気力を振り切って決行した事実を肯定されたゆえの救い、というのが一番近い気がする。行動できたのも優斗くんのおかげではあるとはいえ、そうしたのは紛れもなくわたし自身だ。あれから、このことを考える度に、あの甲斐性を覗かせるやわらかな微笑みを頭に浮かべる。へろへろの虚無目も良かったけど、その顔もたまらなくかわいいね。この陶酔が止むことは無さそうなので、まだまだどこまでもいけそうだ。

 

二日目、昼は晴れていたのに暗くなった途端に雨粒が地面を叩いた。

雨を弾くアスファルト、しとどに濡れるみなとみらい。どんよりとした気候の中でも変わらず佇む大観覧車はくるくると色を変えている。変わらない土台に、色が増えたり変わったりしていく。ここへ来れて本当に良かった。湿っぽい横浜の空気を吸う。ようこそ日本へ。ようこそ横浜へ。心からの感謝を唱えながら、普段乗らない路線の電車に乗る。数々の偶然の上に運命というラベルを無理やり貼っては連れられるようなフリをして、またすぐここへ来たいなと思った。