優しい閃光

背番号2番、立ち位置は0番。わたしのいちばん

紅茶のシフォンケーキとアイスティー、単四電池

会えなかった日々を埋めるみたいにしっくりきて、はじめましてくらい強烈な衝撃。幾度となく通い見慣れたステージよりも広々としているはずなのに、それでも今の彼らが滑り、歌い踊るにはやけに狭く感じた。
確かめるような心づもりがどこかであった。有観客での単独コンサートは二年ぶりで、優斗くんに、HiHi Jetsというかたちに久しぶりに触れることであの日の続きから優斗くんのファンとしてのデータをロードしようとしていた。会えない期間も好きだったし変わらず日々の助けや支えになってくれていたけど、直接、自分の目で見たいものを見たいだけ見られないっていうのはわたしにとって大きな影響が各方面にあったらしく、ねじれたりくずれたり、誰のせいでもなく、前より歪になった気がしていた。

けど、結果的に確認は必要なかったし、古い髙橋優斗担のデータをロードしてる途中で新しい感情とときめきが怒涛に湧いてきたのでうまくいかなくてすぐ諦めた。普段交わることの決してない優斗くんとわたしの並行世界が、交差せずともひとつの軸だけ同じになって、ある角度から見たら一直線になるみたいな感覚。考えるより先に、現場だ!って脳と体が理解する。優斗くんの言葉と言葉以外の全部を受け取ることにいっぱいいっぱいで何も考えられなかったし、好きすぎる顔にあてられて自ら放棄したのもある。いつものやつ。賢しらな思念とか感情がカタルシスと一緒にぶち壊されて弾け飛んで、更地にまた一から解釈や感情を再構築する作業にも慣れてきている自分がいたのがなんだか笑えた。HiHi Jetsのコンサートは本当に楽しい。


人が無謀とも言える夢をみているのを見る、という愉悦がある。わたしがアイドルを摂りたくなる理由のひとつ。夢を見せる職業のひとたちが深く夢にとりこまれて魅せられていて、そんな夢と夢との結び目を目撃するたびにその美しさと残酷さにときめく。

「夢中」の欠乏からはじまって、よすがを得て、優斗くんは今日も舞台の上に立っている。夢中って夢の中って書くけど、優斗くんは夢の中に居続けるためにこそ必死に現実を生きなきゃいけないひとだ。職業アイドルのひと。夢中が尽きたらすぐ次に打ち込めるものを求められるマインドそのものが天賦の才とすら思う。人間力が包んでいた種の萌芽が夢中を求める側から夢中を与える側にさせて、今、収まるべくして収まったような顔でアイドルしているのが改めて不思議で凄くて少し怖くて、ペンライトを強く握った。「野球より熱中できるものに出会った」って言い切ったんだったっけね、たしか二年前の夏に。二年前、ステージにしがみつく姿勢も誠意も覚悟もはじめて恐れた未知も、ぜんぶ飲み込んで一から好きになったのは今となっても何も間違ってなかったな。一度バラバラにして、再構築。今となってはもう慣れてきた作業。あいずはわたしにとっても特別な曲だから、彼らの名刺にも宝物にもなる素敵なMVが生まれて嬉しかったなあ。


歴史を大変更するその手でナンバーワンを象りながら世界の中心で高らかに笑んでたらきめんの優斗くん。それと同じ場所で、もみくちゃになってころころ転がるHiHi Jetsの一部としてふにゃふにゃふざけてあどけなく笑っていたりあらぶの優斗くん。公演中、絆されてまたばかみたいに永遠を願いながらも、頭の隅を掠めるのは初日の挨拶だった。
彼らが数年間かけて築き上げてきたHiHi Jetsにとっての5人、5人にとってのHiHi Jetsは、かつて優斗くんの言った「それぞれの幸せ」が現時点でかなり統一しきっているようにおもう。少なからず共有部分は確実に発言当時より拡大している。言い続けてきた「ずっと」、「永遠に」な想いや認識を彼ら自身とこちらが獲得していく段階は今や充分と言ってよくて、もうとっくに叶えるためのフェーズに入っているんだろう。優斗くんの声が、目が、そう言っているように見えたし、こちらによく理解させるために伝えているようにも聞こえた。初日と千秋楽、普段よりも訥々と、慎重に選んだ言葉で大胆な宣言をする優斗くんのおしゃべりは優斗くんのものじゃなくて、5人のものだった。


毎公演、全員の挨拶で想いを結び直す作業があった。今のおれたちがどこを向いてなんのために歩いていくのか、その答えはこれなんだよって、精一杯こちらへ真摯に向き合って、ときには弱いところをも見せながら伝えてくれた。5人の結びつきと、商品としての堅い矜持の上に成り立つ彼らと観客という消費者との繋がりとが、本懐を遂げるためへの道筋になって辿られる。


主人公の優斗くんにわたしはしばしば主役たらしめられる。猪狩くんの言葉を借りるなら、多様化した幸せの選択肢がごろごろ転がってるこの世の中で、わたしの人生の主役であるわたしは優斗くんのいるHiHi Jetsを自分の意思で選び続ける。たまに切なくなることも苦しくなることもあるかもしれないけれど、わたしはわたしの消費の仕方で優斗くんとHiHi Jetsで幸せになりたいし、きっとこれからも優斗くんのいるHiHi Jetsに夢を見る。それこそ夢中になってまで。むかつくくらいかわいくて悔しいくらいかっこいい優斗くんをおもいおもいに観察するだけの趣味を色んな言葉や行動に換えて、ずっと楽しく遊んでいたい。自分自身、変わることが苦手な性質のくせに、変わり続けるところに惚れ込んでいるから難儀だけど、運の良いことに好きな男の子のいる場所は世界の中心で、HiHi Jetsだからたぶんもうしばらくは大丈夫な気がしている。
湧き上がる手放しの信仰心にも争って、人の子である優斗くんに最上級の敬意と愛情を持って、消費者らしく取捨選択しながら、MCするときのマイクの持ち方とか笑ったときにいくつか叩く手の破裂音とか、語ってるときのちょっとへんな姿勢の手とか、ソロでFORMをするアイドル観とか宇宙一だいすきな顔とか、0番に立つ彼の意思の灯った視線に心臓がうたれる感覚とか、当事者と代弁者を併せている姿にすこし悪くなる居心地とか、そういう自分の好きに背信することなくずーっと純粋に、すこやかに、のんびりと熱烈に、好きでいられたらいいな。いいよね。

今年も楽しくて特別な夏をありがとう。

 
ひさしぶりに何日間もペンライトを振って、やっぱり白って電池消費が激しいなあと思った。何度も何度も単四電池を入れ替える。何度も何度も振りたいから。有限性と、それに抗う無謀な夢。ころころ変わるメンバーカラーもなんだかんだでいつもすぐしっくりくるみたいに。しっくりこないことだっていつもみたいに顔で許すから、たのしく、たまに夢の中で手を振り合って、お互い明日もがんばりましょ!

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