優しい閃光

背番号2番、立ち位置は0番。わたしのいちばん

季節の狭間で見る残光

HiHiJetsの単独公演が終わった。

それすなわち、2018年の私の夏はひとつ幕を下ろした。今まで20年近く生きてきて、ひとつの季節をまるごと何かへ投影......というより、もはや丸投げして、それそのものをひとつの季節として。身勝手にも拠り所にしてはその渦中で時を過ごすなんてしたことがなかった。平成最後に、「はじめて」を教えてもらった夏だった。今年が最初で最後の体験ということもあるかもしれない。なんにせよ、髙橋優斗くんを好きにならなければまず一生味わえない感覚だっただろう。そもそも季節に対して季節以上の感覚を抱いたことがまずなかったはずなのに。

まるで花火が終わった後に残ったバケツの中の濁った水。そんな脳みそで8月13日以降の今日を生きている。きれいな花火は全部し尽くしちゃったけど、残った火薬のにおいと気だるさに、まだまだ帰りたくない気持ちが浮かんで、うだうだとそこに居残り続けている。

目を閉じたら、ぴかぴかきらきらしゅわしゅわの光炎がすぐ目蓋の裏に浮かんでくる。味方だけのシンプルな空間で腕をぶんぶん振った。たとえば笑いながらハート型を書いてみたり、5人で星なんて作ってみたり、すぐ消えちゃうって分かっていても楽しくて、なんならこれが一生残ったらいいのになんて思ったりもして、馬鹿みたいだけど、彼らは本気だったからこちらも本気になってしまいそうになる。

 

また、どうやらわたしたちは、あのEXにおいて「ゲスト」でなく「キャスト」らしかった。猪狩くんは表現と表明の天才。その言葉の通り、もてなすほどの気持ちになれた。彼らに対しては烏滸がましいが過ぎるのであくまで感覚の話。まあでも、この夏確実に毎公演、約2005人で最強になれた自負があるので、達成感に満ち溢れている。勝手にも。

春にお披露目し、一瞬にしておたくたちの心を奪っていった紹介ラップ、『#だぁ~くねすどらごん』がこの夏パワーアップして堂々の再登場を果たした。

HiHi Jetにsがついたのが2月。わたしがHiHi Jetsのsを受け入れられたのは5月。

そしてその複数形を悔しくも愛しく思うようになるのは、紛れもなくこの8月となった。

 

「一人じゃないから複数形」、その複数形に、もしかしたら自分も、自分たちも入れてもらってるんじゃないかってそんな自惚れをしてしまうくらいに彼らは彼らの青春に一緒に迎え入れてくれた。優斗くんがEXの真ん中で「僕たちのライブは参加型です」って言って、次に始まる曲は『HiHi Jets』。彼らと私たちは、愛しいその名前を何度も呼んで、そして『FIRE!!』、『#だぁ~くねすどらごん』と続いて『テンション』。『テンション』の最後で猪狩くんが「りょうちゃん、みずちゃん、さくちゃん、ガリさん、ゆうちゃん」と可愛らしくメンバーの名前を呼んだかと思えば、最後の最後に「みなさん」って。「みなさん」。え?私たち?って。そして極めつけに、

 

「俺ら揃って?」

\HiHi Jets!!!!!/

 

わたしたちはHiHi Jetsらしい。ゲストじゃなくキャスト。なるほど〜

 

絶賛青春中の彼らが追体験させてくれるいびつで特別な青春。楽しくて切なくて苦しいくらいだけど、だからこそ余計にリアルだ。

 

こんなん書いてるんだもん、夏終わったんだ。終わったんだなー。千秋楽の直前、わたしは今年の夏が死んでしまうことに対して笑えるくらい怯えていた。本当に、毎日が楽しかった。

「俺の夏、終わっちゃったよ」

12日の夜、千秋楽のMCでぼそっと優斗くんが言った。目から鱗。そうか、きみも同じなんだ。優斗くんも今年の夏イコール、サマーステーション2018裸の少年だったんだ。私とおんなじだった。なんだ。平成最後に好きなアイドルとお揃いで、夏の心中。

「この夏の青春を詰め込んでください」

言われなくてもそのつもりだよ!って、彼らが繋いで教えてくれた青さぜんぶぜんぶ突っ込んで、半分泣きながら名前を呼んだ。届いただろうか。もらった青春はほんの少しでも還元できただろうか。

 

HiHiJetsのコンサートは拍手で終わる。

ずっと5人でいるから、また何回でも来て。俺らずっと一緒だから。待ってるから。一緒に何回だってライブしよう。

誓いのようで、15歳の懇願と切望に聞こえて仕方がない。このときいつだってわたしの好きな18歳の男の子は何も言わず、ただ元シンメと客席を交互に見やっているだけ。その表情はどの種類に分別されるものなのかわたしにはよくわからない。でも、きっと彼が前よりずっとおとなになったことだけは分かる。

なんて卑怯でとんでもない恒例を生んでくれたな、と思う。だってわたしたちはその問いに肯定でしか答えることができない。策士な男の子たちだ。

 

「俺たちのこと、ずっと愛してくれますか」

 

とてもずるくて何より愛しいその問いかけに、これからも何回でも5人へ応えを叫びたい。偶然でなく必然に拓いた道を何度だって肯定するから。だからいつかてっぺんを取るところを見せてよ。

叫んだあと彼らのレスポンスはない。

HiHi Jetsのコンサートは、わたしたちの拍手で終わる。

 

帯びた熱に任せて本音を言うのなら、8月の全て以外だってあげられる。

でもひとまずは、この8月を捧げてくれて、捧げさせてくれてありがとうございましたという感謝を込めて。

夏と秋の間より。